四万十川源流での自然栽培
目黒米が出来上がるまで
一粒万倍の恵み
たった一粒の米から、やがて数千粒もの実りがもたらされる――。
昔の人々はこの驚異的な自然の力を「一粒万倍」と呼び、日々の暮らしや生き方を支える大切な教えとしてきました。
私たちもまた、この一粒万倍の恵みに感謝しながら、土壌を再生し、環境と共生する自然栽培のお米づくりを続けています。
― 私たちの取り組み ―
  • 太陽・土・水の力を最大限に生かした自然栽培農法
  • 土壌再生と生物多様性の保全を推進
  • 四万十川源流域から、森・川・海のつながりを守る
  • 里山の耕作放棄地を再び蘇らせる

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土壌再生型自然栽培

ここは、四国は四万十川の源流域にある人口270人の限界突破集落、森の国Valley。 国立公園の麓にあるからこそ、清流の恩恵に一番に預かることができる、そんな環境で営みを続けています。 ここの水はやがて四万十川へ流れ、太平洋へと続いていく。だからこそ、ボクらには出来るだけ水を汚すことなく、下流の方々へ引き渡す使命があると思っています。 そこでここでは、無農薬、無肥料、無除草剤の自然栽培でお米や野菜を育てています。 太陽と、水と、土だけで作る自然に寄り添った農法。 その土地で採れたものを、旬の時期に食べる「身土不二」の思想に則って、自給自足の生活をしています。 自分の食べるものを、自分で自然栽培する。 最も合理的で、環境にも、健康にも、そして子どもにも優しい。 そんな森の恵みに感謝の日々です。 森の国Valley #足摺宇和海国立公園 #シゼンタイ #あめつち学舎".

温湯消毒
前年に収穫した籾種は、播種の前に温湯(おんとう)消毒を施します。
六十度のお湯に五分間浸すことで、籾殻の表面に付着した雑菌を取り除きます。
薬剤には頼らず、自然の方法で種を清める――これもまた、健やかな稲づくりの第一歩です。
源流浸水
四万十川源流、国立公園・滑床渓谷を流れる清流――目黒川の水に籾を浸します。
この瞬間、発芽の遺伝子スイッチが静かにオンになり、やがて小さな芽が顔を出します。
絶えず流れ続ける水に浸すことで、籾は淀みのない、新鮮で柔らかな水と触れ続けることができるのです。
*滑床の源流水は硬度わずか6。一般的な軟水(硬度30程度)を大きく下回り、日本でも屈指の「奇跡の軟水」と呼ばれています。
催芽(さいが)
籾種は、水温の積算温度が百度に達するまで浸水を続けます。
(たとえば水温十五度なら、およそ七日間。)
やがて、殻の奥に眠っていた生命が動き出し、小さな芽が顔を覗かせます。
その一粒から始まる命の営みは、稲作の確かな第一歩です。やがて、籾種より小さな芽がでてきます。
新しい命が芽吹いた瞬間です。
播種(はしゅ)
催芽を終えた籾種をトレイに撒き、苗づくりを始めます。
育苗には、籾殻を炭化させた薫炭(くんたん)を使用。
一般的な床土は肥料や堆肥を混ぜ合わせますが、私たちは薫炭だけに委ねています。
薫炭の多孔質な構造は、無数の細菌や微生物の棲家となり、多様な命を育む場をつくり出します。
その小さな生態系が、健やかな苗の成長を支えてくれるのです。
微生物多様性を促す多孔質構造
籾殻薫炭
(もみがらくんたん)
床土に用いる籾殻薫炭は、前年の稲作で得られた籾殻を再利用して作ります。
炭化専用の煙突を使い、丸一日かけてじっくりと炭化させていくことで、黒く軽やかな薫炭へと生まれ変わります。
土壌再生型農業では、稲藁(わら)や籾殻、米糠(ぬか)など、稲作から生まれる副産物をすべて土へ還し、あるいは再利用することで、生態系の循環を支えています。
育苗
幼苗期の稲は、水温と日光に細心の注意を払いながら、プールで大切に育てます。
この“赤ちゃん”の時期に風邪をひいたり、虫に食われたりすると、その後の生育に大きな影響を及ぼします。
だからこそ、日々の管理は欠かせません。
愛情を注ぎ、静かに見守ること――それが健やかな稲づくりの基盤となります。
代かき
水田の準備もいよいよ本格的に進めていきます。
目黒米では、冬のあいだに田んぼをしっかりと乾かす「乾土栽培」によって、抑草の基盤を整えます。
十分に乾かした団粒構造の土壌に水を張り、トラクターでごく浅く耕すことで、酸素をたっぷり含んだ健やかな土に仕上げます。
この手法により、嫌気的な環境を好んで繁茂するコナギなどの雑草を抑えることができるのです。
冬季は排水溝を掘り、畝を立てることでしっかりと土を乾かします。
二毛作栽培
水田の裏作には、乾土農法の工程を活かし、畑としても利用しています。
玉ねぎやじゃがいも、ズッキーニ、かぼちゃといった作物を育て、耕作地の栽培空白期間を有効に活用。さらに豆類や麦を植えることで、土壌に有機物を循環させ、常に健やかな栄養状態を保ち続けます。
二毛作は、土地の力を休ませることなく、むしろ豊かに育む――持続可能な農の知恵なのです。
水路整備
稲作にとって命の源となる水路は、日々の手入れが欠かせません。
目黒集落の中心を流れる殿井出水路は、全長二キロを超える大動脈。地域の暮らしと田んぼを潤すこの水路は、住民みんなで守り育てる共有の資産です。
確かな水の流れがあってこそ、稲作の営みは支えられているのです。

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命の水の旅

国立公園滑床渓谷の清流、 目黒川は四万十川の源流 豊かな森から生まれる水の営み 上流の堰(せき)から続く水路は 森と里を接続する命のつながり 豊かな水の恩恵を一番に受け取る だからこそ、守るべき営みがある #足摺宇和海国立公園 #目黒集落 #regenerativefarming".

田植え
およそ二十センチに育った苗を、いよいよ水田へと植え付けます。
目黒米では、株間を一般的な二十センチよりも広めの二十五〜三十センチに設定し、さらに一箇所に植える苗も五〜六本ではなく、二〜三本に抑えています。こうして全体を「疎植」にします。
疎植によって根張りは力強く広がり、結果として密植と同程度の収量を期待できます。加えて風通しが良くなるため、台風による倒伏を防ぎ、病害虫の蔓延も抑制されます。
自然の理に寄り添った工夫が、健やかな稲の生育を支えているのです。
田植え機
田植えは手作業と並行して、田植え機も活用しています。
手植えだけでは、十人の人手をかけても田んぼ一枚に丸一日。時間も労力も大きく必要となります。
自然農だからといって、すべてを人力に頼るわけではありません。私たちは、必要に応じて機械の力を取り入れながら、効率と自然との共生を両立させています。

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田植えの様子

先輩から後輩へ 田植機の乗り方指導 若く有望な女性達が支える 目黒の田んぼは 愛に溢れている #自然栽培".

除草
田植えから三日後、最初のチェーン除草を行います。
改造した田植え機に、重さ数十キロのチェーンを取り付け、田んぼをゆっくりと引きながら、小さな草の芽を掻き起こしていきます。
この頃には、稲の苗はすでにしっかりと土中に根を張り、びくともしません。その根の成長の速さと力強さには、いつも驚かされます。

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チェーン除草

チェーンを使って、田んぼの除草 苗は強いから外れない 草が生えないので農薬要らず 美味しい四万十清流米のヒミツ❤︎".

(このリール動画は、海外を中心に100万回再生されました。)
除草2
私たちは、最新のロボット技術も積極的に取り入れています。
GPS制御のロボットによる除草は、機械の軽量化によって土壌への負担を抑え、さらに自動走行による省人化で作業の効率を大きく高めてくれます。
人間の叡智と自然の営みを掛け合わせながら、より持続可能な未来の自然農法を模索し続けています。

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防草+除草で水田除草を楽に!

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水管理
標高二百メートルに位置する目黒集落は、周囲を千二百メートル級の山々に抱かれた谷あいにあります。昼夜の寒暖差が大きく、その気候が米の旨みをいっそう深めてくれます。
とりわけ夏場は、水量と水温の管理が欠かせません。
稲にとって最適な温度と流れを保つため、私たちは全身で水を感じ取りながら、その恵みを稲へと届けていきます。水が稲に運び込む養分は、まさに大地と空と人とをつなぐ生命の循環そのものです。
同時に水路は子どもの豊かな遊び場でもあります。
分けつ
夏の盛り、稲は次々と分けつを重ね、一本の苗から四十本以上へと広がり、力強く根を張っていきます。
肥料も薬剤も加えない――それが自然栽培。
けれども、燦々と降り注ぐ太陽の光、清らかな水、そして滋養あふれる土壌が、稲の内に秘められた生命力を最大限に引き出してくれます。
私たちができるのは、ただその環境を整え、静かに見守ること。
その営みは、まるで一つのアート作品を生み出すような、創造のよろこびに満ちています。
右が自然栽培のお米の根
益虫
薬剤を使わない水田では、ウンカなどの害虫を捕食する蜘蛛が巣を張り巡らし、稲を静かに守っています。
病害虫から稲穂を守る手立ては、人の力ではなく、生態系そのものの循環に委ねる――それが自然栽培の大きな特徴です。
夏の朝、露をまとった無数の蜘蛛の巣が一面にきらめく光景は、まるで天上の楽園を思わせるほどの美しさ。
虫の世界に「善悪」はありません。
ただ、絶え間ない循環が繰り返されている。
その姿を観察し、共生の在り方を学び取ることこそ、自然栽培の核心なのです。
準絶滅危惧種のシマゲンゴロウが帰ってきてくれました。
出穂
いよいよ葉の間から、稲の穂が姿を現し始めます。
この頃になると草の勢いも落ち着き、稲穂はゆるやかに色づき、実りへの道を歩み出します。
「実るほど、首を垂れる稲穂かな」
重みを増した穂が大きく撓み、あたりを赤とんぼが舞い始める頃、空気にはほんのりと秋の気配が漂ってきます。
稲刈り
いよいよ実りの季節、稲刈りの時を迎えます。
晴れ間が続き、稲がよく乾いた日を選んで、一気に刈り取っていきます。
たった一粒の種籾から生まれた、数えきれないほどの命。
ここまで健やかに育ってくれたことに感謝を込め、鎌を入れます。
その一刈り一刈りに、自然の恵みと人の営みが重なっているのです。
乾燥
稲を天日に干す「ハザ掛け」は、里山の集落に広がる懐かしくも美しい原風景です。
およそ二〜三週間、自然の風と陽射しにゆっくりと委ねることで、稲はじっくりと乾燥し、旨みを増していきます。
時間をかけて熟成されたお米は、まさに自然の力が織りなすごちそう。
その一粒一粒に、里山の季節の香りが宿ります。
収穫
収穫は、里山の集落にとって一年の大きな節目であり、喜びの祭りでもあります。
みんなで力を合わせ、黄金色の稲を刈り取りながら、共に実りを分かち合うひととき。そこには、この一年を支えてくれた自然と人への感謝が満ちています。
太陽の光、清らかな水、そして肥沃な土壌――。
その恵みに深く感謝しながら、来る年へと受け継がれる命の循環に祈りを捧げます。
脱穀
昭和中期に稲作が機械化される以前は、収穫した稲をさまざまな道具を用いて一つひとつ手作業で処理していました。
回転式脱穀機も、その代表的な器具のひとつです。稲穂を差し込み、回転する歯で籾を外していく仕組みは、実は現代のコンバインにも受け継がれており、その基本構造は変わっていません。
人の力と工夫が生んだ道具から、現在の農業機械へ。
その進化の過程には、自然と向き合い続けてきた営みの歴史が刻まれています。

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回転式脱穀機

種籾たねもみは、自家採取で米🌾づくりの準備 わずか60年前までの日常 ばあちゃんが教えてくれた。 石油がなくなって 機械がなくなっても 米は作れるよ #脱穀機 #シゼンタイ #目黒集落".

コンバイン
手刈りであれば、十人がかりで一日かけても、やっと一枚の田んぼを刈り終えるほど。
しかしコンバインを使えば、一人でもわずか数十分で稲刈りを終えることができます。
機械化によって、日本の稲作は大きく効率化され、農の現場は格段に便利になりました。
私たちも文明の恩恵を享受しつつ、その根底にある「あめつちの心」を忘れることなく、自然との共生と持続可能な農法を大切に守り続けています。
籾摺り
乾燥を終えた籾は、籾摺り機によって籾殻と玄米に選り分けられます。
取り除かれた籾殻は、そのまま土へ還すだけでなく、燻炭として再利用され、次なる生命を育む力となります。
何ひとつ無駄にしない――。
その思想こそが、持続可能な農の循環の第一歩なのです。
精米(米糠)
玄米は、精米することで白く輝く白米へとなります。
しかしもちろん、玄米もとても素晴らしいスーパーフード。
その秘密は、精米時に研ぎ落とされる米糠にあります。
米糠には、ミネラル、ビタミンなどの多くの栄養素が含まれています。
この米糠も土に返したり、鶏の餌にしたりすることで、自然循環に繋げていきます。
そして、美味しいご飯へ
私たちが毎日の食卓でいただく白いご飯。
その一膳に至るまでには、大自然の恵みと人々の営み、数えきれないほどの工程が重ねられています。
「米」という字は「八十八」と書き、八十八の手間を経てはじめてお米が実るとも言われます。
その尊いプロセスに思いを馳せ、感謝を込めながら。
私たちは、この美味しいご飯を皆さんに届けたいと願っています。